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当社の人材育成についてご案内しましたが、社員が当社でどのような経験を積み、自己開発を進めているか、実例を挙げて紹介します。個々の社員によりキャリアの持ち方は変わりますので、一例に過ぎませんが、ミドル社員がどのようなキャリアパスを歩んでいるかをご覧ください。

研究開発を牽引し、
事業としての面白みを
高めていきたい

研究開発本部 
農業化学研究所 
生物評価GL
M.F.
農学生命科学研究科生産・
環境生物学専攻
博士課程修了

研究開発を牽引し、
事業としての面白みを
高めていきたい

世界的な殺虫剤テネべナールTMの選抜と
新規化合物の生物評価を通じて農薬評価研究の基礎を培う

入社直後の数年間は最終段階に差し掛かっていた新規鱗翅目剤テーマの研究に従事し、各種評価手法を学びながら候補化合物の選抜に携わりました。この時選抜した化合物は、現在世界中で広く登録・使用されている殺虫剤テネべナールTMですが、候補化合物はいずれも特徴があり、その中から何を基準に選抜するのかということが大きな課題でした。生物評価担当として科学的な魅力、競合優位性といった観点での試験データ取得に注力しましたが、各部門で検討された事業規模・収益、許認可へのハードルなど多角的な議論にも参加できたことで、大学とは異なる企業研究の世界を実感しました。この時の経験が今の私を支えています。

その後は新規化合物の探索評価に加えて、他社との協働検討のためのプロジェクトに複数参加して様々な生物評価を行いました。異なる特性を持つ化合物の特性を明らかにするために試行錯誤しながら評価方法を考えることはとても楽しく、検証・解析・仮説設定を通じて農薬評価研究者としての基礎を培うことができたと思っています。

M.F.様

研究として面白いのか、事業として面白いのか

入社間もない頃に、海外のマルチナショナル企業との共同開発に向けた交渉に同席したことがありました。研究者同士の議論では、「データと科学的考察」という共通言語をもとに率直に意見を交わすことが多いですが、事業開発の交渉では、互いの意図は必ずしも明らかにせず、自社に有利な条件を目指していくという、大きな違いがありました。大学時代には知り得なかったタフな駆け引きを目の当たりにし、張り詰めた空気を感じました。

それまでは「研究として面白いか、自分がワクワクするか」という視点で業務にあたっていましたが、この交渉以降、「我々が生み出そうとしている新しい「もの」はビジネスとして成り立つのか、事業として面白いのか」ということも考えるようになりました。

ここでいう新しい「もの」とは、新規物質だけでなく、新製品や新事業など広い意味を持ち、社会課題を解決する手段になりうるものです。社会に貢献できる新しい「もの」を生み出すことはとても難しいですが、研究・事業開発の両面でとても面白いと思っています。

研究開発を俯瞰で考える

入社4年目に約1年、産休・育休を取得しました。
復帰後は、キャリアアップへのチャレンジを後押しいただき、本社へ異動して研究開発管理業務に従事しました。
当社は研究開発型企業として新規有効成分を創出するだけでなく、その成分を最大限活用するための製品開発、製造、販売を行っています。本社では、研究開発計画の策定に必要な情報の集約・管理や事業テーマ管理の会議運営、予算策定準備に携わりました。研究所にいるだけでは知り得なかった多種多様な業務がありましたが、全てを詳細まで理解することは困難です。限られた時間で全体像を把握し、俯瞰する姿勢を身につけた時期だったと思います。

本社異動後の新業務と育児の両立は想像以上に大変で、周囲の理解やフォローにも助けられながら、がむしゃらに毎日を過ごしていました。最初の頃は仕事も育児も完璧にこなしたい気持ちと現実のギャップに行き詰ってしまったことがありました。その際に夫や先輩から違う視点を投げ掛けられ、世の中には様々な家族の形があり、サービスがあることに気づきました。利用できるリソースは積極的に使って自分がやるべきことに注力できる時間を生み出すんだ、と意識を転換できたことは大きかったと思います。仕事でも同じで、多くの複雑なタスクを抱えていても全体が俯瞰できれば、自分が今すべきことをシンプルにとらえられるのではないでしょうか。

ワークとライフ、それぞれから学ぶことがつながっていく

結局のところ私には復帰直後のキャリアチェンジは負担が大きく、ほどなくして自宅から近い研究所に戻ることとなりました。新しい部署で成果をあげられないままでの再異動には自分自身の否定的な気持ちが大きかったのですが、当時の上司のライフワークバランスへの配慮と職場のフォローのおかげで働くことをあきらめずに、手のかかる乳幼児期を乗り越えられたと思います。

育児には新しい発見がたくさんありました。親と子という近い関係ですが、子供は個性を持ち親とは異なる個人です。親には親の、子供には子供の考えがあり、お互いが納得するためにたくさんの工夫をしましたし、できないことに対するモチベーションのコントロールや、できるようになるために一緒に考える過程は発見の連続でした。

家族でさえ考え方の相違があるのに、部下や同僚ならなおさらです。大人同士の対話ではありますが、年齢も育ってきた環境も違う個人との関わり方、という観点で育児を通して気づくこと、学ぶことは本当に多いですね。出産育児でスローダウンしたかに思ったキャリアですが、私には今のポジションに必要なスキルの一部を学ぶ重要な時期だったと感じています。

M.F.様

特色あるプロになれるよう、
部下がチャレンジできる環境を整える

現在は、茂原、野洲に所在する生物評価グループを統括する立場にあり、60名を超える部下を抱えています。グループには、殺虫剤・殺菌剤・除草剤の評価に加え圃場を管理するチームがあり、当社の剤に関する生物評価全体を担っています。

管理者としては、予算や人員を確保し、研究テーマを管理して組織目標や業務課題を達成していくこととともに、人材の育成が重要な役割です。立ち上がりが早い人、ゆっくり伸びる人、こだわりを追及する人など色々なタイプがいますが、私は、それぞれが自分の特性を理解し、必要なスキルを身に着けて特色あるプロになって欲しいと考えています。

当社には、事業や会社に対するメリットを合理的に示すことができれば、新しいアイデアやチャレンジに対して裁量を与え、支援する社風があります。チャレンジは未知への取り組みですから、否定から入っては進みません。私はポジティブにそれぞれの良さに目を向け、強みを生かして成長して欲しいと思っています。私自身もそうした環境で育っていますので、部下のメンバーがチャレンジできる環境を整え、やりたいことをサポートするのが私の役割と思っています。

グローバルな研究開発体制の構築を進めたい

私はこれまでタイ・インド・ベトナム・フィピン・ドイツ・フランス・スペイン・アメリカなど多くの国々に出張し、それぞれの国や地域で行われている農業の方法や試験機関の体制、研究の仕方などに大きな違いがあることを見てきました。

例えば、日本では機械が進んでいる田植え作業ですが、インドでは広大な水田に人が入って手作業で行っていることもあります。労働環境の違いからこうしたことが起こるわけですが、広大な土地では機械化が当たり前という先入観を持っていると、議論がかみ合わなかったり、製品コンセプトの設計を誤ったりします。

これから当社がさらに成長していくためには、海外市場でのビジネス拡大が必須ですから、様々な国や地域の実際の農業現場や環境を理解した上で研究開発を進め、ソリューションを提供できる組織を実現したいと思っています。地域特有の重要雑草、病害虫があり、土壌や気候も異なる中で我々の新製品がどのような効果を示すのか、日本にいるだけでは検証は困難です。現在はタイにある研究拠点を中心にアジア地域の研究体制強化が進んでいますが、将来的には、アジア、アフリカ、欧州、北米、南米、オセアニアの各地域に合わせた研究開発体制が必要と考えています。自社拠点を持つだけではなく、10年先を見据えながら信頼できるパートナーとのネットワークを構築し、当社のビジネスをグローバルに牽引していきたいと思っています。