オリゼメートの作用4.オリゼメートに耐菌性が出現しにくい理由
オリゼメートは昭和50年に発売して以来、30年以上にわたり日本で最も使用され続けているいもち病防除剤ですが、「耐性菌が出現して効かなくなった」との報告は一度もなされておりません。
何故、オリゼメートには耐性菌が出現しないのでしょうか?
そもそも何故特定の薬剤には耐性菌が出現するのでしょうか?
病原菌の遺伝子が変異しやすいと、耐性菌出現の確立が高まります。変異によって耐性化した病原菌は病原性や環境適応力に大きな変化がなければ圃場で生き残り、薬剤を使用するたびに蔓延して防除上問題となります。
作用点が特定の部位である薬剤(作用点が選択的:ベンゾイミダゾール系薬剤、DMI剤、ストロビルリン系薬剤等)で出現しやすく、作用点が多い薬剤(SH阻害剤等)で出現し難いと考えられます。ベンゾイミダゾール系薬剤、DMI剤、ストロビルリン系薬剤等は汎用性に優れた薬剤ですが、これらの薬剤に対しては病原菌の薬剤作用点の遺伝子が点変異(一塩基置換)しただけでも容易に耐性化します。
オリゼメートに耐性菌が出現しにくい理由
- ①オリゼメートの有効成分であるプロベナゾールは通常の殺菌剤とは異なり、病原菌に直接作用するのではなく、宿主植物に作用することが挙げられます。すなわち、病原菌がプロベナゾールにより選抜されることがないからです。
- ②プロベナゾールで誘導される様々な防御機構の全てを打ち破ることのできる病原菌が出現する確率は低く、それが宿主上で選抜される可能性はほとんどないと考えられるからです。
プロベナゾールの主な作用機構
- 活性酸素の産生誘導
- 抗菌性物質の産生誘導
- リグニン合成系の活性化
オリゼメートを処理されたイネにいもち菌が侵入するためには、活性酸素を無毒化する能力の獲得とともに、酸化型脂肪酸、モミラクトン類、ファイトカサン類、オリザレキシン類など全ての抗菌性物質に対して耐性とならなければなりません。さらには、リグニン化され固くなった細胞壁を突破できる能力も獲得しなければならないのです。
病原菌にしてみると「乗り越えなければならない壁」がたくさんありすぎ、対応しきれないわけです。
プロベナゾールの作用機構とプロベナゾールに耐性化するために必要とされる病原菌の症状
プロベナゾールで処理されたイネに感染するためには活性酸素を無毒化するとともに、すべての抗菌物質に耐性となりリグニン化された細胞壁を突破できる能力を獲得しなければなりません。プロベナゾールで誘導されるさまざまな防御機構のすべてを打ち破ることの出来る病原体が出現する可能性は低いと考えられます。
いもち病菌のライフサイクルに対するオリゼメートの作用
オリゼメートは、イネの根から吸収され
1.いもち病のライフサイクルの各ステップを阻害します。
2.その阻害作用が総合されて圃場において高い防除効果を示します。